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SNSで「事実だから書いていい」は通用しない?弁護士が警告する名誉毀損の落とし穴

10月18日の朝、弁護士法人mamori代表の弁護士ビーノさん(@bino_bengoshi)が、SNSトラブルで「事実だから書いていい」と信じてしまう人がたどりがちな流れと、名誉毀損の注意点をXに投稿した。長文ポストなので、全文を載せたうえで、法律の基本を公的機関などの資料で確認しておく。

SNSのトラブルで「事実だから書いていい」と信じている人を、何人も見てきました。そういうかたは、だいたい同じ道をたどります。

・「本当のことしか書いてない」と言い聞かせる
・拡散希望を付けて、全国に配ってしまう
・翌朝こわくなって消すが、スクショは残る
・削除を求められて、やっと読み返す
・相手の代理人から連絡が来て、青くなる
・それでも「向こうが悪いことをやってる」と言う

名誉棄損は「本当のこと」を書いても成立します。嘘でなければセーフ、ではないんです。セーフになるのは、世の中のために知らせる必要があった場合だけ。個人どうしのいざこざで、そう認められることはまずありません。

正しさを証明しようとして書いた人が、最後は慰謝料を払う側になることも。腹が立ったまま指が動いているときほど、要注意です。

 

 

名誉毀損は「事実かどうか」に関係なく成立する

名誉毀損罪を定めた刑法230条は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず」処罰すると書いている。法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金だ(2025年6月から、従来の「懲役・禁錮」は「拘禁刑」に変わった)。

ポイントは「その事実の有無にかかわらず」という部分。書いた内容が真実でも、人の社会的評価を下げる事実を不特定多数が見られる形で示せば、名誉毀損にあたる可能性がある。国民生活センターの解説でも、真実であっても社会的評価が下がるおそれのある内容を述べれば成立し得ると説明されている。

 

例外になるのは「公共の利害に関する場合」だけ(刑法230条の2)

では、本当のことを書いても処罰されない場合はないのか。刑法230条の2は、次のような特例を置いている。

  • 公共の利害に関する事実であること(世の中の多くの人が知ることに意味がある事実。単なる好奇心の対象かどうかではないとされる)
  • 目的が専ら公益を図ることであること(条文は「専ら」だが、主たる目的が公益であればよいとする解説もある)
  • 真実であることの証明があること(書いた側が示す必要があり、簡単ではないと指摘されている)

この3つがそろったときに、罰しないとされる。なお、まだ起訴されていない人の犯罪行為に関する事実は「公共の利害に関する事実」とみなされ、公務員や公選による公務員の候補者に関する事実は、真実の証明があれば罰しないとされるなど、いくつか補足の規定もある。

また、真実だと証明できなくても、真実と信じたことに「確実な資料、根拠に照らし相当の理由」があれば、故意がなく名誉毀損罪は成立しないとした最高裁の判断(昭和44年)もある。ただし、これは十分な裏付けがあった場合の話で、「そう聞いたから」「そう思ったから」で通るものではない。

 

個人どうしのトラブルは、認められにくいと言われる

元ポストは「個人どうしのいざこざで、そう認められることはまずありません」と書いている。弁護士ドットコムニュースでも、個人の被害を公表することが公益目的にあたるかは「微妙」とされ、SNSで告発するのではなく、内容証明や弁護士を通した交渉、報道機関を通すなど別の方法を検討したほうがよい、という弁護士の見解が紹介されている。

法律事務所の解説では、私生活上の事実は原則として「公共の利害に関する事実」ではなく(例外的に、その人の社会的影響力などから認められる場合もある)、主な目的が嫌がらせや仕返しの場合は公益目的とは認められない、と整理されている。「腹が立って書いた」「相手が悪いと知らせたかった」というだけでは、特例にあてはめるのは難しいようだ。

 

刑事だけでなく、民事で慰謝料を請求されることもある

名誉毀損は、刑事罰とは別に、民事の不法行為(民法709条)として損害賠償を求められることもある。民事でも、公共の利害に関する事実で専ら公益目的、かつ重要な部分が真実と証明されれば違法性がなく、証明できなくても真実と信じる相当の理由があれば責任は否定される、というのが最高裁(昭和41年)以来の考え方だ。

慰謝料の額は、書き込みの内容や態様、広がった範囲などを総合して裁判所が判断するため、一概には言えない。名誉を回復するための措置(謝罪文の掲載など)が求められることもある。

 

リポスト・拡散にも責任が及ぶことがある

政府広報オンラインは、自分で投稿しなくても、再投稿(リポスト)などで拡散した場合も、名誉毀損罪や侮辱罪に問われたり、慰謝料を請求されたりすることがある、と注意している。

民事の裁判例としては、大阪高裁の令和2年(2020年)6月23日判決がある。コメントを付けない単純リツイートでも、元の投稿が他人の社会的評価を下げる内容であれば、違法性や責任を否定する事情がない限り、投稿した経緯や意図を問わず不法行為責任を負う、と判断した。この件では慰謝料30万円と弁護士費用3万円が認められている。高裁の判断のひとつであり、すべてのケースに同じ結論が出るわけではないが、「拡散しただけ」が言い訳になりにくいことは頭に入れておきたい。

 

消しても、スクショは残る

元ポストにもあるとおり、翌朝になって投稿を消しても、保存されたスクリーンショットまでは消せない。弁護士ドットコムニュースでも、削除や訂正・謝罪をしても、すでにスクショが取られていれば完全には消せないと指摘されている。

前述の大阪高裁の件でも、投稿が後に削除されていたことを考慮しても、違法性が重大でないとはいえないと判断されている。削除は大切な対応のひとつだが、「消せばなかったことになる」わけではない。

 

2022年の侮辱罪の厳罰化と、匿名でも特定される仕組み

事実を示さなくても、公然と人を侮辱すれば侮辱罪になる。この侮辱罪は、ネット上の誹謗中傷が社会問題になったことを受けて、2022年7月7日に法定刑が引き上げられた。それまでは「拘留または科料」だけだったが、「1年以下の懲役・禁錮もしくは30万円以下の罰金」が加わり、現在は拘禁刑の導入に伴い「1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」となっている。法務省は、処罰される行為の範囲そのものは変わっていないと説明している。

また、匿名の投稿でも、発信者の情報開示を求める手続きがある。2022年10月から、SNS事業者と通信事業者に対する開示請求を一つの裁判手続(発信者情報開示命令)で進められるようになった。開示が認められるには、権利が侵害されたことが明らかであることや、開示を受けるべき正当な理由があることなどが必要とされる。政府広報オンラインも「匿名だからといって何を言ってもいいわけではない」と注意している。

 

書き込む前の心がけ

  • 「本当かどうか」だけでなく、「誰のどんな事実を、何のために書くのか」を考える
  • 公益のためか、腹いせか。自分の目的を正直に見直す
  • 確かな資料や根拠で裏付けられているかを確認する
  • 腹が立っているときは送信せず、一度時間を置く
  • 他人の投稿のリポスト・拡散も、自分の投稿と同じつもりで内容を確かめる
  • トラブルは、SNSに書く前に弁護士や公的な相談窓口に相談する

 

フルスロ
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怒っているときほど、送信ボタンを押す前に一呼吸おきたいところです

※この記事は一般的な情報の紹介であり、法的助言ではありません。個別の事案については、弁護士などの専門家や公的な相談窓口にご相談ください。

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